開催都市と日付: ノヴォシビルスク州, ケメロヴォ州, トムスク州, アルタイ地方, クラスノヤルスク地方, モスクワ
講師:田中 弘
実施時間:09:00-12:30
講演要旨
日本産業界の2021年度3月期決算では、代表的業種である、自動車、総合電機、IT・通信、衣料(アパレル)などで、一人勝ち企業と、大きく引き離された二番手以下企業の業績の差が顕著であった。この業績の差は新型コロナウィルス禍への対応のみではなく、勝ち組企業が、5年から10年前より、急速に変貌する世界市場に対して確かな展望を持ち、不退転の決意をもって企業変革を進め、次世代市場に合わせて企業資源の集中を行った結果と観察される。企業は“ゴーイングコンサーン”であるという概念は、最早、つい最近まで一流とされていた企業にすら、当てはまらなくなっている。企業の生存と企業価値の積み増しは、企業経営のアジリティー(俊敏性)に依存するとも言える。
本セミナーでは、企業経営にアジリティーをもたらす施策とマネジメント手法のうち、「プロジェクト経営論」とも称される応用プロジェクトマネジメント、より抜粋し、解説を行う。セミナーでは次のトピックスをカバーする。
- 2021年度日本企業の決算から考察する勝ち組企業アジャイル経営の要素分析
- 企業変革のためのバックキャスティングとプログラムマネジメント
企業の近未来を透視して、到達時点での企業のあるべき姿を描き、(現状からの積み上げ方式ではなく)CEOトップダウン方式の変革、つまりバックキャスティングを、プログラムマネジメント*を用いて行う。
*企業戦略の各柱と戦略のデリバリーのための複数のフロント・プロジェクトを繋ぐ上級プロジェクト
マネジメント
- ビジネス継続プログラム(Business Continuity Program)
中小企業を含めて、企業継続(ビジネス・コンティニュイティ)のための戦略ブレークダウンストラクチャー(Strategy Breakdown Structure)を作る。
- ビジネス・エコシステム作り
自社をコアとして、オープンイノベーション(Open Innovation)思想に基づき、新たな企業価値、競争力を生み出す企業連携を創る。
- ビジネス(プロジェクト)・フィジビリティー分析
新規事業をプロジェクトと捉え、技術的商用性、収益性、社会性などを総合的に判断する。
- アジャイル・プロジェクトマネジメント(Agile Project Management)
アジャイル開発手法は、日本の製造業で1990年代に原型が誕生し(自動車メーカーの新車開発、Boeing 社での日本航空機メーカーの貢献など)、米国で、ウォーターフォール型プロジェクト推進(基本計画→設計→実装の伝統的なプロジェクトマネジメント手法)で失敗が続いたITシステム構築プロジェクト向けに、顧客との対話を重視するフレキシブルな開発方法として定着し、今日では、IT産業のみならず製造業の新製品開発プロジェクトにも一部適用されている。プロジェクトの顧客要求の詳細をはじめから定義せず、顧客とプロジェクトチーム(あるいはベンダー)が一体となり(スクラムScrumを組む)一週間ごとなど、期間を定めて、双方合意した期間目標に対する成果を確認しながら、システムや新製品を作り込んでいく手法である。
- デザイン思考(Design Thinking)
1990年代の米国ベンチャー企業に始まり、現在では欧米や日本の企業や日本政府も活用を進めている、マス・カスタマーやコミュニティーのウォンツ(Wants)を直接対話をしながら聴取し、新製品や顧客サービスあるいは社会サービスの段階的な開発を、種々のプロトタイピング手法を用いながら行う方法。